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ユーザー訪問:No.18 株式会社スグロ鉄工

No.18 株式会社スグロ鉄工

機械加工の現場から

技術を支える考え方
【マグネシウム加工の問題点】


マグネシウム製品のワーク

マグネシウムは、地球上で6番目にありふれた元素である。実用金属元素としてはアルミニウム、鉄に続いて3番目に多く存在する。比重は、軽量金属の代表であるアルミに対して2/3、チタンの1/3と、実用金属としては最軽量。強度でも単重量比ではアルミや鉄よりも高い特性を持っている。

この軽くて強いという特性から、昨今では携帯電話やパソコン、デジタルカメラなどの外装、筐体にマグネシウムが用いられる機会も増えてきている。

ただし問題になるのが、その加工性。外装という用途から、薄肉の製品が多く、寸法精度以上にデザイン的な要素が要求される。当然のことながら、大量生産品として繰り返し精度も必要となる。軽量の上、薄肉の加工が要求されるためビビリの発生や、素材の逃げなど、加工上の問題が数多く発生する。また、写真のフラッシュにマグネシウム粉が使用されたことからもわかるように、切粉の発火や、粉塵の爆発の可能性もあり、十分な安全対策も必要となる

スグロ鉄工では、当初マグネシウムを通常の加工と同様に回転工具を用い加工にトライしたという。しかし、高回転で微細切込のため磨耗が激しく、超硬刃物を用いても寿命が短くとてもうまくいくものではなかった。

そこで、発想を転換し、シーェパーを応用、平削りで加工してみることとなった。通常の考え方では、高速回転工具を使うことが常識であるが、ことマグネシウムに関しては、平削りが有効なことがわかってきたという。

刃先の耐久性が飛躍的に向上し、ランニングコストは大幅に低減した。

また、素材の逃げやビビリには、材料を下支えするための金型を作り、金型に乗せて加工するという方法を編み出し、加工精度を確保することができるようになった。

これらの工法の確立により、プラスチックとコストの面で十分渡り合えるマグネシウムの加工が可能になったのである。

【発想の源】


こうした発想の転換や方法論の確立は、会長を含めた現場の作業者による経験によるものだという。

「基本的には、加工でも何でも駄目な点を先に出す。良いことと悪いことは背中合わせだから、後はひっくり返せば良いわけです。ただし、そのひっくり返し方に経験とか、技術が要るんですけどね」

作業者がより精度や効率を求めていくうちに生まれたアイデアを具現化し、工法が確立されていった。

バブル崩壊後の不景気が追い風になり、多くの大手工作機械メーカーによりバックアップを受けたという。「うちのような小さなところの話もコストダウンの話であれば真剣に聞いてくれましたよ」現場で生まれたアイデアを設計に反映して、マグネシウム加工機を作っていった。

こうして生まれた機械は、自社ブランドの機械として国内はもちろん、台湾や中国にまで販売されている。

加工技術を確立したのなら、それを外部へ流出させないようにするのが通常だが、なぜ公開するようになったのかを伺うと、「マグネシウム業界自体がまだ新しいし、国内の需要を全部うちに集めることもできない、それなら多くの企業に参入して欲しいという思いから公開するようにしました」

【技術に対する考え】

このことに限らず、スグロ鉄工は技術に関して、独特の考え方を持っている。

通常であれば、独自技術は競合する他社に漏れることを恐れて非公開にするものである。 しかし、スグロ鉄工では基本的にすべて公開している。

勝呂会長曰く「隠すと見たがる、実力がわからなければ喧嘩したがる。公開してすべてを見せることが、逆に無用な喧嘩を防ぐことになるんですよ」と笑う。

「最初に手の内を見せれば、逆に他社も見せないわけには行かなくなる。見ればお互い実力がわかりますよね。負けてるところがあれば直せばいい。逆に相手の弱いところも見えますから、そこから戦略を考えればいい。こうしてこれまで問題なくやってきましたよ」

技術は確立した時点で陳腐化が始まるともいう。

【【絶対に崩してはいけないこと】

多くの企業で困っていることのひとつに、技術の伝承や後継者育成の問題がある。

難加工を得意とするスグロ鉄工では、どのようにしているかを尋ねると、やはり独自の考えをお話してくれた。

「門前の小僧習わぬ経を読む、じゃないですが毎日会社に来て、見てれば誰でも覚えますよ。技術っていうのはそんなもんじゃないですか」ただし、その後に続く言葉が興味深い。

「近代設備があってもうちの連中はみな汎用機ができる。刃物は手で研ぐ、ドリル研磨機はあまり使わないですよ。やっぱりドリルを研げない旋盤士は、結果的に本物の旋盤士とはいえないです。刃物でどう変わるか、その感覚は教えられない。自分で経験して覚えるしかないんですよ」

スグロ鉄工にはマニュアルが存在しないともいう。

『一人ひとりが自身で、刃物というものを知ること』このことが、勝呂会長の考える『ものづくりの根底』であり、絶対に崩してはいけないことだという。


よく研がれ整理されたドリル刃