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No.6 株式会社 松本精機機械加工の現場から 5.「イタリア・ボローニャからの福音」
ところで、松本精機の2階の部屋の壁には、二枚の紙に分けて複写された地図が貼り合わせてある。よく見ると、それはあの特徴あるブーツの形をしたイタリア半島の地図だった。なぜ、ここにイタリアの地図が…という問いに対して、鈴木社長は淡々と答えた。 つまり、『イタリアのボローニャは、板橋区と姉妹提携を結んでいる』ということだった。なんだそうか、と思われたが、実はその後の話が実に興味深かった。 『姉妹都市としての交流が始まる中で、何年か前に、先方の大学から教授陣が交流使節団として板橋に来られたことがあった。そのとき、団員のなかにいた一人の女性教授の言葉が、板橋の町工場や区の産業振興に携わる関係者らに強い影響をもたらすきっかけとなった』というのである。 「イタリアでは職人が自信を持ち、高いステータスを得ている。それに引き替えて、日本の職人さんはなぜか下向きですね」 たったそれだけの短いコメントだったが、長年「3K」の仕事と言われ、後継者もなく、激しいコスト競争と設備投資との板挟みにあって翻弄されてきた町工場の経営者らに、強い衝撃が走ったという。松本精機の鈴木社長もその中にいた。 すかさず質問がでた。 「確かにドイツにはマイスターという制度があります。イタリアにも同様の身分保障があるのですか、それを日本にも創らなければいけないということですか」 女性教授は静かに答えた。 「何を勘違いしているのですか、優れた技術を認めるのは国家や行政ではありませんよ、最初に認めるのはマーケットです。それを認めさせるのが職人の技ではありませんか」 まさに、この言葉からは『目から鱗が落ちる』思いだったという。 『確かに、現在の日本の技術者は資格や制度に依存している。それが身分保障であり、さらに生活保障であると勘違いしている。そんなものは無くとも、しっかりとした技術をもって製品をつくり、それを市場に認めさせることができれば、それだけで充分に効果を発揮するはずである。そのことに気づかされた』 では、どうすればよいか、このときから自らの会社の在り方について、改めて見直す取り組みが始まった。また、これに意を同じくする、板橋区内での部品加工業者の集まりが始まった。区からも、そうした動きに対して助力の働きかけがあった。 これが後に「イタテック」として活躍することになるグループの始まりだったのである。 これこそ、「イタリア・ボローニャからの福音」である。そういえば、「イタテック」の「イタ…」とは、板橋のイタだけでなく、イタリアのイタでもあるのかも知れない。 今回、ユーザ訪問した松本精機と「イタテック」との関係、「イタテック」の活動などについては、引き続き次回の「ユーザ訪問番外版・結束する町工場パワー」の中で詳しく紹介したい。
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